研究概要 |
本研究計画では,メタボリックシンドロームの進展と,その臨床的帰結として最重要な動脈硬化発症の分子機構について,血管と代謝臓器の両者に関してストレス応答に対する転写ネットワークの観点から横断的に研究を行ない,代謝ストレスなどの慢性的ストレスや慢性炎症状態がどのようにしてメタボリックシンドロームから動脈硬化性疾患を惹起するのかを明らかとすることを目的とする。さらに,転写ネットワークに対して作用する血管疾患及びメタボリックシンドロームへの治療戦略の開発を行うことを目的として研究を進めた。その結果,(1)代謝臓器の機能とストレス応答を制御するKLF5を中心とした転写調節ネットワークの解析を行い,KLF5が骨格筋におけるエネルギー代謝や膵β細胞におけるストレス応答に重要であることを見いだした。(2)動脈硬化の転写調節ネットワークの解析と比較することによって,KLF5が相互作用する転写因子及びコファクターの違いによって組織特異的な作用を示すことを見いだした。また,肥満においては,KLF5は脂肪組織分化を促すとともに骨格筋における脂肪酸燃焼を抑制し,肥満及びメタボリックシンドロームの進展に寄与すること,同時に心血管系においては組織リモデリングを進めることによって動脈硬化など心血管疾患の進展に寄与する。(3)KLF5が骨格筋においてはPPARδと相互作用することを見いだし,KLF5とPPARδの相互作用領域を同定した。
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