研究課題
今年度はまず骨髄細胞移植に代わる、代替え幹細胞を用いた血管再生療法の開発について焦点を絞り研究を行った。我々は自己由来細胞ソースとして皮下脂肪に着目した。皮下脂肪は低侵襲で容易に採取することが可能で、間葉系幹細胞を培養により分離拡張できる。脂肪組織由来幹細胞の分離:脂肪組織をミンスし、コラゲナーゼ処理を行う。浮遊培養を行い、成熟脂肪細胞を分離したのちに、付着細胞としての間葉系幹細胞(Mesenchymal stem cell: MSC)・内皮細胞・周皮細胞を1塊として採取した。低酸素下培養を行い、間葉系幹細胞(Adipose-derived stem cell: ASC)の分離を行った。ASCの血管再生能に関する研究;自己脂肪組織由来ASCについて、細胞移植による血管新生効果について検討を加えた。我々はこれまでにマウス・ラット・ウサギの重症下肢虚血モデルやラット・ブタ心筋梗塞モデルにおいて、自家骨髄単核球細胞やヒト臍帯血由来内皮前駆細胞の移植により、虚血心筋・骨格筋内の血管新生や側副血行路の発達が増強され、心機能改善や下肢血流増加がもたらされることを報告してきた(JCI2000; Circulation 2001)。今回これら動物モデルを用いて、脂肪組織由来ASC細胞移植による血管再生効果についてin vivoで検討した。ASC移植は、マウスにおいて下肢虚血後の血管新生を有意に増強した。ASC移植群では、組織からのSDF-1やVEGFの産生が増強しており、末梢血液中、骨髄中のEPC様細胞の増加が見られた。この血管新生作用やEPC増加作用はSDF-1中和抗体の投与で有意に卸制された。前駆細胞移植の他疾患への応用:次に内皮前駆細胞や骨髄細胞の他の疾患モデルへの応用に関する基礎的検討を加えた。糖尿病モデルマウスの下肢に移植すると、末梢神経表面の栄養血管新生とともに、末梢神経機能が改善することを示した。急性・慢性肝傷害が前駆細胞移植により改善することを示した。
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Nat. Cell Biol. (in press)
Arterioscler. Thromb. Vasc. Biol. 27
ページ: 99-105
ページ: 2363-2369