研究概要 |
我々は心臓に於けるANP,BNPの心不全に伴う遺伝子再発現機序にNRSF/NRSE系という強力な転写抑制系が働いておりその抑制の回避が転写亢進に働くことを確認してきた。心不全は2次性アルドズテロン症であるが、アルドステロン合成酵素であるCYP11B2遺伝子のイントロンにもNRSE配列と相同性の高い配列が存在していることがコンピューター解析で明らかとなった。本年度は副腎でのアルドステロンに産生機序にNRSF/NRSE系が関与しているかを検討した。 【結果】 ヒト副賢腺腫由来細胞株295R細胞の核蛋白質抽出物中にNRSFの存在しることがWestern blot法で確認され、ゲルミフトアッセイでNRSFとCYP11B2のNRSE配列が結合することを確認した。dominant negative NRSFを含有ずるアデノウイルスベクター(AD/dnNRSF)を295R細胞にトランスフェクションするとCYP11 2mRNAとCACN1HmRNAの双方が増加し、RIAで測定したアルドズデロンの分泌量もmRNAと並行して増加することが示された。 CYP11B2遺伝子の5'上流1.5Kbpをルシラェラーゼ遺伝子の上流にさらに下流にはCYP11B2遺伝子のNRSE配列を結合させたレポーター遺伝子(CYP11B2/NRSE/Luc)を作製し検討を加えると、予想通りCYP11B2/NRSE/Lucの活性は、変異型のNRSEを有するCYP11B2/NRSEmt/LucとNRSE配列を有さないCYP11B2/Lucの活性の約50%に抑制された。これらのレポーター遺伝子とdnNRSFを同時にトランスフェクションすると、 CYP11B2/NRSE/Lucの活性は上昇したが、CYP11B2/NRSEmt/LucやCYP11B2/Lucの活性もdnNRSFの共トランスフェクションによりdnNRSFの非存在下と比べ2倍増加した。この過剰発現が、CACNA1H遺伝子の発現亢進による相加効果であることを確認するために、Cav3.2のプロッカーであるefonidipineを添加するとこの過剰反応は抑制された。 アルドステロンの刺激薬であるアンジオテンシンIIやカリウムによるCYP11B2遺伝子発現の亢進にNRSF/NRSE系が関与しているか否かを検討すると、AD/dnNRSF存在下ではアンジオテンシンIIやカリウムによるCYP11B2の遺伝子発現亢進が有意に抑制された。 【結論】 アルドステロンの合成にCYP11B2遺伝子とCACNA1H遺伝子双方に存在するNRSE配列が関与していることが明らかとなった。
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