[1]Cdk9活性化に導く情報伝達経路の解明 Cdk9は7SK small nuclear RNA (snRNA)というnone-coding RNAを介してHEXIM-1と呼ばれる内因性抑制物質に結合している状態では不活性化されている。ストレス刺激により7SK snRNAがCdk9/cyclin TからはずれることによってHEXIM-1からの抑制が解除されCdk9は活性化される。 我々はHEXIM-1を発現させるアデノウイルスベクターを構築し、Cdk9とHEXIM-1の結合に影響を与える上流の刺激伝達系に関して現在探索中である。 [2]Cdk9活性化による遺伝子発現様式の変化の分子生物学的機構の解明 心筋特異的にCdk9を活性化させたトランスジェニックマウスの遺伝子発現解析の結果エネルギー代謝の"master regulator"である転写活性化因子転写活性化因子peroxisome proliferators activated receptor-γ coactivator (PGC)-1αの発現または活性が抑制されていることを見出した。PGC-1αの活性は、遺伝子発現レベルだけでなく、翻訳後修飾、他の蛋白との相互作用によっても制御されている。我々は、PGC-1αの活性がユビキチン・プロテアソーム系による蛋白質分解、細胞内局在変化によっても制御されていることを見出した。(論文投稿中)。今後、Cdk9を活性化とPGC-1αの蛋白質分解、細胞内局在変化への影響を検討していく予定である。 [3]心肥大の予後に及ぼすCdk9の過度の活性化の抑制の効果 リン酸化活性を欠失させたCdk9(D167N)を心筋特異的に過剰発現させたトランスジェニックマウスは、圧負荷刺激によって野生型に比して容易に心不全に陥った。In vitroで、Cdk9活性を抑制すると、抗アポトーシス蛋白の選択的減少に伴って、心筋細胞がアポトーシスを起こすことが明らかになった。この結果は、ある程度のCdk9活性が正常の心機能維持に必須であることを意味する(論文投稿準備中)。 さらにCdk9の内因性の阻害分子であるHEXIM-1を心筋に発現させたマウスを作成し、現在、現在解析を始めたところである。
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