研究課題/領域番号 |
18390241
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
黒木 由夫 札幌医科大学, 医学部, 教授 (70161784)
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研究分担者 |
高橋 弘毅 札幌医科大学, 医学部, 教授 (60231396)
清水 健之 札幌医科大学, 医学部, 講師 (10339137)
光澤 博昭 札幌医科大学, 医学部, 助手 (40325874)
西谷 千明 札幌医科大学, 医学部, 助手 (30381255)
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キーワード | 肺サーファクタント / コレクチン / SP-A / SP-D / TLR4 / MD-2 / 肺炎症 / エンドトキシン |
研究概要 |
本研究は、肺サーファクタント蛋白質AとD (SP-AとSP-D)およびTol1様受容体(TLR)による感染防御と炎症制御の機構を解明し、これらの蛋白質分子を利用した病態肺治療法の基盤の確立を目的として遂行されている。以下に、本年度の研究成果を要約する。 1.SP-AとSP-Dが、ともに、TLR2とTLR4の細胞外ドメインに蛋白質問相互作用によって結合することを明らかにした。特にSP-AはTLR4/MD-2発現細胞に対するsmooth LPSの結合を阻止し、LPS惹起細胞応答を抑制した。 2.SP-Aのコラーゲン様構造に着目し、コラーゲン様領域に存在するGly-X-Y繰り返しの中断(kink)のないコラーゲン様領域を持つSP-A cDNAを作成し、組換え蛋白質を発現させて、ロータリーシャドウ法による電子顕微鏡で観察したところ、このSP-Aは花束様構造(Y構造)をとらず、bendを持たないV字型の18量体を呈しており、リン脂質リポソームの凝集能が野生型に比較して低下していた。また、コラーゲン様領域を除去したSP-A (CRF : collagenase-resistant fragment)は、TLR4に対する結合親和性が600倍低下しており、LPS惹起炎症抑制効果もほとんど認められなかった。以上の結果は、SP-Aのコラーゲン様領域がその機能発現にきわめて重要であることを示している。 3.TLR4細胞外ドメインのN末端側に着目し、TLR4 Glu24-Lys47領域に相当する合成ペプチド(TLR4ペプチド)を作成し、組換え可溶型MD-2(sMD-2)に対する結合性を調べたところ、TLR4ペプチドはMD-2に濃度依存性に結合し、組換え可溶型TLR4細胞外ドメイン(sTLR4)とsMD-2との結合を阻止した。さらに、TLR4ペプチドは、TLR4トランスフェクト細胞でのLPS惹起NF-kappaB活性化とIL-8分泌を有意に抑制した。以上の結果は、TLR4細胞外ドメインN末端側のGlu24-Lys47領域がMD-2結合部位であることを示している。 4.sTLR4はlipidAに結合しなかったが、sTLR4存在下ではsMD-2のlipidA結合量とその親和性が有意に増加した。sTLR4とsMD2の同時添加によって、TLR4/MD-2発現HEK293細胞とマクロファージ様細胞株U937からのLPS惹起シグナル伝達とTNF-alpha分泌が有意に抑制された。sTLR4-sMD-2複合体はAlexa標識LPSのR4/MD-2発現細胞への結合を抑制した。 5.LPSのマウスへの経気管内投与によるエンドトキシン惹起肺炎症モデルで、LPSと同時にsTLR4/sMD-2を投与すると、LPS惹起肺炎症で認められていた肺組織の出血、細胞浸潤が消失し、ほぼ正常肺の組織像となった。また、マウスのBALF中の好中球数とTNF-alpha濃度は、sTLR4/sMD-2の投与によって有意に抑制された。以上の結果は、これらの組換え蛋白がエンドトキシン惹起肺炎症の抑制に応用可能であることを示している。
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