研究課題/領域番号 |
18390248
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
若松 佑子 名古屋大学, 生物機能開発利用研究センター, 教授 (20026800)
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研究分担者 |
松尾 清一 名古屋大学, 医学系研究科, 教授 (70190410)
橋本 寿史 名古屋大学, 生物機能開発利用研究センター, 助教 (30359757)
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キーワード | 遺伝子 / 発生・分化 / 内科 / 腎臓 / 膵臓 / 嚢胞腎 / 糖尿病 / インスリン |
研究概要 |
メダカ多発性嚢胞腎症変異体pcは後発性嚢胞腎症を発症し、ヒトの嚢胞腎と似た病態を示す。pcの原因遺伝子はヒトGLIS3オーソログであるが、GLIS3突然変異はヒトで新生児性糖尿病を引き起こすことが報告されており、嚢胞腎症以外に症状が見られないメダカとは表現型が異なる。今年度は、GLIS3ノックアウトマウスの表現型を解析すると同時に、メダカpc変異体で糖尿病に関連した表現型が見られない点に注目しメダカの膵臓におけるpc遺伝子の役割を検討した。 1)GLIS3ノックアウトマウス GLIS3(-/-)マウスは一見正常に生まれたが、生後一週間ほどで死亡した。生後すぐに高血糖を示し、野生型に比べると成長が悪かった。GLIS3(-/-)マウスの膵臓を組織学的に観察したところ、ランゲルハンス島の形成不全が認められ、インスリン陽性細胞やグルカゴン陽性細胞は有意に減少していた。インスリンの皮下注射により血糖値が顕著に低下したことから、GLIS3(-/-)マウスはインスリン依存性糖尿病であることが明らかとなった。腎臓においては、発生中のネフロンに異常は認められなかったが、成熟したネフロンにおいてはボーマン腔および尿細管・集合管に嚢胞の形成を認めた。 2)メダカの膵臓におけるpc/GLIS3の発現 メダカにおいても哺乳類と同様、膵臓でpc遺伝子が発現していた。しかしながら、pc変異体の膵臓にはインスリンの発現を含め、特に異常は認められなかった。 以上のように、マウスおよびメダカにおいてpc/GLIS3遺伝子の突然変異は、嚢胞腎症の原因となることが明らかとなった。膵臓発生におけるpc/GLIS3の重要性は異なっていたが、これは食性(糖依存性)の違いに基づいて進化した膵臓の役割に見られる動物間の差異に起因するのかもしれない。
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