研究課題/領域番号 |
18390248
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
若松 佑子 名古屋大学, 生物機能開発利用研究センター, 教授 (20026800)
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研究分担者 |
松尾 清一 名古屋大学, 医学系研究科, 教授 (70190410)
橋本 寿史 名古屋大学, 生物機能開発利用研究センター, 助教 (30359757)
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キーワード | 遺伝子 / 発生・分化 / 内科 / 腎臓 / 膵臓 / 嚢胞腎 / 繊毛 / 細胞内局在 |
研究概要 |
メダカ多発性嚢胞腎症変異体pcは後発性嚢胞腎症を発症し、ヒトの嚢胞腎と似た病態を示す。pcの原因遺伝子は哺乳類GLIS3オーソログであり、Glis3ノックアウトマウスはメダカpc変異体と同様に重篤な多発性嚢胞腎症を示すことを報告した。今年度は、glis3タンパク質の機能欠損がなぜ嚢胞腎症をもたらすかに注目して研究を行った。 1) メダカpc変異体における尿流 哺乳類の腎臓において尿流が血圧によって作られるが、魚類では腎尿細管内の繊毛運動によって積極的に尿流を作ることが知られる。この違いは哺乳類の腎臓繊毛が非運動性であり、魚類のそれが運動性であることと関係すると考えられる。魚類では尿流の遅滞は腎嚢胞形成の原因となることが報告されている。メダカpc変異体の腎臓繊毛を観察したところ、繊毛の運動性は失われていなかった。そこで、蛍光化合物を血管に注射し、その蛍光が血流により腎糸球体へ運ばれて濾過された後、膀胱に到達するまでの時間を調べた。その結果、pc変異体では到達時間の遅延が認められた。次に、pc変異体の腎臓繊毛の長さを測定したところ、野生型に比べて30%以上短くなっていた。これらのことから、pc変異体における嚢胞形成の直接の原因は、腎臓繊毛が短くなったことによって尿流を作る駆動力が小さくなったためではないかと考えられた。 2) glis3タンパク質の細胞内局在 マウスの腎尿細管上皮細胞株(Dail)にGFP融合glis3タンパク質を強制発現させて、GFPの蛍光によってglis3タンパク質の細胞内局在を調べた。GFP融合glis3タンパク質の蛍光は、繊毛と核に特異的に検出された。このことは、glis3タンパク質が繊毛および核において何らかの機能を持っている可能性を示唆している。 以上の結果から、メダカpc変異体の腎嚢胞形成は、腎尿細管上皮の繊毛の機能異常によって引き起こされると考えられた。
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