研究課題
高血糖状態で発現の上昇する新規遺伝子を同定して、その機能を報告してきたが、そのひとつがtranslocase of inner mitochondrial membrane44(Tim44)である(Wada J et al.Proc Natl Acad Sci U S A95,144-149,1998)。ミトコンドリア蛋白のほとんどが核DNAでコーディングされているため、ミトコンドリアは細胞質からミトコンドリア内へ蛋白質をimportする必要があるが、Tim44は蛋白を細胞質よりミトコンドリア基質内へimportするmachinery proteinであることが明らかとなってきている。ICR(CD-1)マウスに片腎摘出を施し、さらにストレプトゾトシンを投与することによって糖尿病性腎症モデルを作製した。従来ストレプトゾトシンのみの投与では、糸球体肥大・メサンギウム基質の増加、アルブミン尿の増加などが明らかとなるのは6ヶ月ほどの期間が必要であった。片腎摘出とストレプトゾトシン投与を同時に行うことによって、約8週間で同様の病変がもたらされることが明らかとなった。さらにサイトメガロウイルスプロモータによって発現がコントロールされる哺乳類細胞発現ベクターであるpcDNA3.1を用いて、マウス腎組織への導入効率を検討した。12週齢のCD-1マウスに片腎摘出施行後2週間の時点で、ストレプトゾトシンを投与し、糖尿病モデルを作製した。高血糖を確認してから、Tim44の発現ベクター(pcDNA3.1/Tim44)およびコントロールベクター(pcDNA3.1)を尾静脈から1週間毎に投与を行い、最終的に8週後まで観察を行う。導入効率が不十分であることが予測されるためHVJ-Eベクターに封入して、キャリアーとして用いて遺伝子導入を行った。腎組織像、尿中アルブミン排泄、hydroethidineによるO_2の可視化( Oxidant fluorescent microtopography )、アボトーシスアッセイ(TUNEL)などを施行したところ、いずれのパラメータにおいてもTim44の遺伝子導入によって改善することが判明した。ヒト近尿細管細胞(HK2)を高糖で刺激すると活性酸素の産生、ATPの増加、内膜電位の変化、細胞増殖、アポトーシスが誘導されるが、この変化はTimm44の発現ベクターによって抑制された。またTimm44siRNAと発現ベクターの検討によりTim44はミトコンドリアへのsuperoxide dismutaseやglutathione dismutaseといった抗酸化酵素をimportしてミトコンドリアでの活性酸素を制御していることが示された。
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