研究概要 |
これまでリン代謝調節は、副甲状腺ホルモン(PTH)、ビタミンD、カルシトニンなどの古典的な骨代謝を中心としたカルシウム調節ホルモンの付随的な作用として行われると考えられていた。しかしながら、我々は、脳室、消化管、骨および腎近位尿細管を中心とした、リン調節系を担う新たなリンセンサー蛋白(Growth-related Na/Picotransporter,type IIc)とその下流の存在する新規リン代謝モルモン(FGF23, Staniocalcin, PHEX, Klotho etc)の生理作用、さらに細胞外に反応するリン応答転写因子(Pho4,TFE3)を発見した。本研究期間にリン代謝調節機構の中核をなすリンセンサーによるリン感受機構の全貌を解明すること、さらにリンセンサーからのシグナルを伝える新規リン代謝ホルモン群(PHEX, FGF23とKlothoの相互作用)の機能を明らかにすることで、新しいリン代謝系を司るネットワーク分子によるシグナル伝達系の解明を目指した。平成19年度はリンセンサー(NaPi-IIc)ノックアウト動物のミネラル代謝異常について解析し、骨細胞におけるFGF23およびDMP-1の発現異常がカルシウム/リン代謝異常の原因であることを明らかにした。さらに、NaPi-IIa/NaPi-IIcのW-KOダブルノックアウトマウスの解析から、脳室内のカルシウム/リン代謝に関与するklothoの過剰分泌と、脳室内リン濃度の低下が確認された。これらの異常は全身のリン代謝異常の原因である事を明らかにした。また、W-KOマウスに観察されるクル病/骨軟化症の発症原因と腎尿細管リン輸送異常との関係を明らかにした。
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