研究課題
本計画は、我々が蓄積してきた腎臓発生の知識と遺伝子改変マウス作成技術を利用して、腎臓の各コンポーネント形成を自由に制御しようとするものである。前駆細胞集団を含む後腎間葉はWntの作用を受けて、上皮つまり管腔構造を形成し、糸球体、近位尿細管、ヘンレの係蹄、遠位尿細管という複数の系統に分化していく。この腎臓における細胞運命決定の機構を明らかにし、それを利用してその運命を転換させることを試みる。これができれば、再生医療において、幹細胞から誘導した腎臓前駆細胞を患者の病態に応じて、糸球体方向へ、あるいは尿細管方向へと誘導する際の基盤技術になるはずである。具体的にはCreリコンビナーゼを発現するマウスと、運命決定候補遺伝子Notch2の上流にSTOP配列とCreの標的であるLoxP配列をもつマウス、の2種類を作成し、これを交配することによって、STOP配列が切り出され、Notch2が活性化されることになる。平成18年度の研究において、後者のマウスを、ES細胞における相同組み換え及びキメラマウス作成を経て完成させ、これに全身性にCreリコンビナーゼを発現するマウスを交配したところ、胎性致死となり、確かにNotch2が活性化されており、このシステムが期待通りに働きうることを確認した。また腎臓の細胞系譜検出のための免疫染色法も確立し、当該年度における研究目標を達成したと考える。平成19年度は、さらに複数のCre発現マウスとの交配も行い、腎臓細胞の運命転換法を同定したい。
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Genes to Cells 12(2)
ページ: 171-182
Development 133(15)
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