研究課題
平成19年度は筋萎縮性側索硬化症(ALS)の分子病態解明と新規の診断・治療法の開発を目的として研究を行った。ALSモデル動物である変異型SOD1遺伝子導入トランスジェニックマウスを用いて、ALSの選択的運動ニューロン死におけるオートファジー、ミトコンドリアDNA修復酵素や小胞体ストレスの関与につき検討を行った。オートファジーにおけるオートファゴソーム形成に関連するLC3-IIとその制御に関わるmTORの動態についての解析では、 ALSモデルマウスの運動障害発症期においてコントロールよりも脊髄におけるLC3-IIのタンパクレベルの発現が増加していた。また、リン酸化mTORを用いた免疫染色では発症初期においてリン酸化mTOR陽性運動ニューロンの割合が有意に減少していた。このことはALSにおけるオートファジーの亢進を示唆し、リン酸化mTORはオートファジーの調節に関与している可能性が考えられた。また、ALSモデルマウスにおけるミトコンドリア内の酸化ストレスと各種DNA修復酵素の関連についての解析では、ミトコンドリア内のDNA修復酵素発現の低下を認め、さらに小胞体ストレスに関しては、ALSモデルマウスの発症前期から小胞体ストレスに関わるアポトーシス関連タンパクの不均衡を認めており、これらの変化とALSにおける選択的運動ニューロン死との関連が強く示唆された。また、42名のALS患者の脳脊髄液中の単球走化活性因子(MCP-1)と血管内皮増殖因子(VEGF)の解析では、ALS患者においてはコントロールに比べてMCP-1の有意な上昇を認め、対照的にVEGFは低い傾向があった。MCP-1の値はALSの重症度と相関があり、MCP-1/VEGF比の上昇は他の神経変性疾患に比べてALS患者に特異的に認められ、脳脊髄液中のMCP-1値およびMCP-1/VEGF比は臨床的に有用なALSの診断マーカーに成り得ると考えられた。
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