虚血時の再生療法を行う上では、虚血時のシグナル伝達について明らかにしておく必要がある。Hypoxia-inducible factor 1 (HIF1)は、低酸素下における転写因子として注目されており、その機能解析は、脳虚血における病態生理の解明に結びつくものと期待されている。HIF1αは、prolyl-hydroxylases (PHDs)によるユビキチン化、ならびにfactor-inhibiting HIF1 (FIH)による共役分子の結合阻害によって抑制的に制御されている。PHDsの分解はユビキチンリガーゼSiah2により促進されることが報告されており、FIHのHIF1転写制御に対するSiahの作用機序について検討した。まず抗FIH抗体を作成の上GST-Siah1を用いたGST pull down assayを行いin vitroにおけるSiah1とFIHの結合について検討した。次に抗FIH抗体を用いた免疫沈降により細胞内におけるSiah1とFIHの結合を確認した。Siah1によるFIHの分解については、FIHのubiquitination assay、 pulse chase assayにより解析した。GST pull down assayにてSiah1とFIHがin vitroにて結合することが示された。細胞内に発現させたSiahについての免疫沈降を行いin vivoにおいてもSiah1とFIHは結合していた。またプロテアーゼ阻害剤の存在下での検討にてSiahがFIHをユビキチン化していることが明らかになった。Siahに対するsiRNAを導入するとFIHが増加した。SiahはPHDsのみならずFIHをもユビキチン化することによってHIF1の活性を促進していることが明らかになった。今後Siahをターゲットとした再生療法について更に検討を重ねて行く予定である。
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