研究概要 |
インフォームドコンセントが得られた脳腫瘍患者から摘出された正常大脳皮質の一部を材料に定法(Kanda et al.1994)を用いて脳微小血管を分離し、酵素処理ののちtype I-collagen coated dishに播種、一週間後に増殖中の細胞群に温度感受性SV40ラージT抗原を組み込んだレトロウイルスを感染させ、ヒト脳毛細血管由来内皮細胞株を樹立した。得られた内皮細胞群は、バリアー構成内皮の特徴であるspindle fiber shaped morphologyを呈していた。位相差顕微鏡像およびDiI-Ac-LDLの取り込み確認実験から、ほぼ100%の内皮細胞集団であることが示された。得られた内皮細胞クローンはバリアー構成遺伝子であるoccludin、claudin-5、ZO-1、ZO-2を発現していた。またGLUT-1やp-gpをはじめとするBBB特異的transporterも発現していた。加えて、Transendothelial resistance (TEER)の測定および^<14>C-inulinを用いた内皮細胞monolayerにおける透過性の検証を施行し、バリアー機能を有することが示された。本細胞株は形態的にも機能的にもin vivoでのBBB機能を十分に把持しており、現時点で最も優れたBBBのin vitroモデル細胞になるものと思われる。この他,平成18年度には温度感受性SV40 LARGE T抗原トランスジェニックラット脳・末梢神経から内皮細胞、血管周細胞、アストロサイトなどの不死化細胞株を得ることができ、平成19年度以降の本研究の発展の礎を築くことができた。
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