研究概要 |
インフォームドコンセントが得られた剖検例から末梢神経組織を無菌的に採取し、主任研究者の確立した方法(Kanda, et. al.,1997)に従って末梢神経神経内膜由来内皮細胞を分離した。酵素処理ののちtype I-collagen coated dishに播種、一週間後に増殖中の細胞群に温度感受性SV40ラージT抗原、ヒトテロメラーゼを組み込んだレトロウイルスを感染させ、ヒト末梢神経神経内膜由来内皮細胞株を樹立した。得られた内皮細胞群は、バリアー構成内皮の特徴であるspindle fiber shaped morphologyを呈し、前年度の本研究で確立したヒト脳毛細血管由来内皮細胞と類似した形態を示した。位相差顕微鏡像およびDiI-Ac-LDLの取り込み確認実験から、ほぼ100%の内皮細胞集団であることが示された。得られた内皮細胞クローンはバリアー構成蛋白であるoccludin,claudin-5,ZO-1,ZO-2に加えて、GLUT-1やp-gpなどのバリアー特異的トランスポーター蛋白も発現していた。Transendothelial resistance(TEER)の測定及び14C-inulinを用いた内皮細胞monolayer機能も併せて評価し、十分なバリアー機能を有する細胞株であることが確認できた。ヒトBNB由来内皮細胞株の樹立は世界初である。この他、ヒト血管周細胞株も樹立できた。ヒトBNBを構成する2つの細胞の不死化株がここに得られた訳で、今後、この細胞株を中核としてBNBの細胞生物学的研究が爆発的に進展することが期待できる。
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