研究概要 |
ジストニアは反復性・捻転性の異常な筋収縮により特定の動作や姿勢が障害される病態で、わが国には少なくとも2万人の患者が存在していると考えられている。原因不明で、充分な病理所見も未解明であった本疾患について、その病態機序や治療法の開発のために、分子遺伝学・組織化学・病理学。神経生理学てきなアプローチを総合し、多面的な研究を昨年度にひきつづき行った。とくに本年度は遺伝性ジストニアDYT3の原因が神経可塑性の調節に重要な役割を果たしている可能性があるTAF1遺伝子の神経特異型アイソフォームN-TAF1の欠乏であることを世界で初めて明らかにすることができた(Makino, Kaji, et. al. 2007)。また、ジストニアをきたす基底核病変を明らかにするために、それをきたさない多系統萎縮症(MSA)におけるストリオゾーム病変についても、DYT3との差異をあきらかにした(Sato, et. al. 2007)。また近年急速に普及しつつある脳深部刺激法についても新しい刺激部位を提唱し、パーキンソン病での視床下核刺激術との比較をおこなった(Yamada, et. al. 2007, Goto, et. al. 2008)。ボツリヌス治療についてもB型毒素製剤の特性を明らかにした(Arimura, et. al. 2007)。臨床症状としての頚部痛とカルシウム沈着についても症例報告を行った(Nodera, et. al. 2007)。 これらの検討から、ジストニアは神経可塑性に関連した分子メカニズムの異常により運動に関連した感覚入力と運動出力のミスマッチがおこっている可能性が初めて明らかにされた。
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