研究概要 |
エメリー・ドレイフス型筋ジストロフィー(EDMD)は筋ジストロフィー、関節拘縮、心伝導障害を伴う心筋症を3主徴とする遺伝性筋疾患で、若年者で高率に突然死をきたす社会医学的に重要な疾患である。本研究ではヒト組織およびモデルマウスを用いてEDMDの病態を明らかにすることを目的とした。 今年度我々は、EDMD患者骨格筋では筋細胞核のみならず骨格筋再生に重要な筋衛星細胞の核にも形態学的変化が生じていることをあきらかにした(1)。またEDMD筋では筋核数が優位に増加していること(1)、筋衛星細胞数は増加しているものの、活性化されていないこと(2)を明らかにした。 そこで実験的壊死再生モデルを用いた経時的な遺伝子発現変化を検討した結果、筋再生過程に遅延が認められた。現在、筋再生関連遺伝子の発現変化を検討中である。 一方、Emd KO,Lmna KI,およびEmd KO/Lmna KI二重変異マウスにおける心筋障害について検討を行った結果、2重変異マウスではLmna KIマウスで認められる明らかな心筋症変化が乏しいにもかかわらず寿命は同程度に短縮していることを明らかとした。現在、シグナル伝達を含め詳細に検討中である。 本研究において我々は臨床的にEDMDと診断されたにもかかわらずEMD,LMNA両遺伝子変異の見いだされない患者を多数見いだした。そこで詳細な臨床病理学的解析を行うとともに、疾患関連候補遺伝子のスクリーニングを行った。その結果、FHL1変異例1例(3)、A遺伝子変異を2例、B遺伝子変異を3例に見いだした(AB:仮名)。そこでFHL1変異による疾患の臨床的多様性を明らかにし、第2LIMドメイン内システイン残基の重要性を明らかにした(4)。また、新規疾患関連遺伝子として見いだしたA、Bについては、現在、疾患との関連を生化学的、細胞生物学的に検討中である。
|