インスリン反応性を獲得しているGLUT4小胞の形成・運搬に関わる因子群を同定するとともに、生細胞イメージング技術によりそれらの機能を解析することを目的としている。インスリン反応性GLUT4膜移行システムは脂肪細胞および筋細胞の細胞分化とともに発達していくため、本年度は、分化した脂肪細胞に加え、分化型培養筋細胞におけるインスリン反応性GLUT4小胞の形成機構について、独自の特殊培養系で得られた高度発達型筋細胞を用いて、あわせて解析することを試みた。特に、小胞輸送に関わる低分子量GTP結合蛋白Rabの制御因子であるAS160(Tbcld4)とTbcld1の機能について、インスリンシグナルおよび運動刺激シグナルの接点としての役割を調べることを目的とした。【実績】高いインスリン反応性を有する培養脂肪細胞と異なり、培養筋細胞では分化させただけではインスリン反応性GL-UT4膜移行システムは十分に発達しておらず、その収縮運動活動を活性化させることによって有意に改善されることを明らかにした。このインスリン反応性の獲得にはインスリン受容体シグナル系の感受性亢進などは認められなかったが、endosome-TGN経路の蛋白選別をつかさどるsortilin蛋白の重要性を認めた。さらに、このインスリン反応性GLUT4膜移行システムの改善にともない、Rab蛋白の制御因子であるTbcld1のリン酸化(Ser231)が収縮活動依存性に増加することを明らかにした。インスリン受容体シグナル(Akt)によってリン酸化されることに加え、収縮運動シグナル(AMPキナーゼ)は、Tbcld1のこれまで知られていなかったSer231のリン酸化を引き起こしてGLUT4小胞輸送に関わっている可能性を示した。これらの結果から、Tbcld1は、インスリン依存性だけでなく、運動依存性のGLUT4膜移行においても、シグナル系と小胞輸送マシーナリー分子を連結させる重要な制御因子であることが推察された。
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