研究課題
多臓器生物であるヒトにおける全身での代謝調節には、多くの臓器が協調的に関与しているものと想定される。18年度は、脂肪肝の際に肝臓での発現亢進が認められるPPARγ2を肝に過剰発現させる実験により、肝臓からの求心性神経シグナルが、糖代謝・エネルギー代謝に重要な役割を果たしていることを見出したと。本年度は、さらに詳細に検討を加え、ころ、肝臓からの迷走神経求心路および交感神経遠心路が基礎代謝や脂肪分解の全身における調節に重要な役割を果たしていることを示した。この自律神経系ネットワークは、過栄養時に基礎代謝を亢進させ肥満を予防するフィードバック機構として機能していると想定された。さらに、自律神経求心路を介して、脳が肝臓での代謝に関する情報を受け、末梢臓器に各臓器を統合した協調的代謝に向けての指令を出している、つまり、脳が全身の代謝調節における管制塔の役割をしているというモデルを提唱した。さらに、肥満マウスを用いて、肥満病態に及ぼす影響を検討したところ、肝PPARγ発現にともなう自律神経系ネットワーク機構は、交感神経の活性化を生じることにより、肥満の際の血圧上昇にも関与している可能性が示唆された。このように、肥満を予防する働きをすると考えられる内在性の機構が、慢性的な過栄養のもとでは、メタボリックシンドロームの病態形成にも関わることが考えられる。これらの臓器間代謝情報ネットワークのさらなる検討は、個体における恒常性の維持機構の解明に加え、メタボリックシンドロームの病態の理解にもつながるものと期待される。
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