研究概要 |
カロリー特に脂質の過剰摂取は肥満,メタボリックシンドローム、糖尿病の発症要因として国民の健康を脅かしている。また脂肪酸の質の違いにより代謝にもたらす影響が異なることもよく知られている。われわれは,このように過栄養が生活習慣病をもたらす分子病態メカニズムの解明を目標に、栄養シグナルが脂肪酸合成を誘導する分子機構を生理、病態両方の視点で解析してきた。特に脂肪酸合成の転写調節に焦点をあてた研究を展開し、SREBP-1cが栄養状態によって変動する倹約遺伝子であり、脂肪酸合成における主要な制御因子であることを生体において明かにしてきた。また肝やβ細胞の脂肪毒性病態において、SREBP-1cの活性化が関与していることを示してきた。従来より個体としてのエネルギー過剰が、エネルギー代謝の破綻を通じて、高脂血症、糖尿病などの生活習慣病を引き起こすというコンセプトのもと、主にマウスを用いた実験を通じてこの脂質合成転写因子SREBP-1cがインスリンシグナルやインスリン分泌に直接影響し、メタボリックシンドロームや糖尿病の病態の発症や悪化に関連していることを示した。さらにSREBP-1cの標的遺伝子として,炭素数12-16の飽和および一価不飽和脂肪酸の鎖長伸長反応をつかさどり、炭素数18以上の長鎖脂肪酸の合成に重要な役割を果たしている酵素Elov16をクローニングし、その機能を解析した。
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