研究概要 |
線維芽細胞増殖因子(fibroblast growth factor:FGF)23は,骨により産生され,腎臓に作用することにより血中リン濃度を低下させる液性因子である。このFGF23作用障害により,高リン血症を特徴とする腫瘍状石灰沈着症が惹起されることが明らかにされたことから,FGF23は生理的ホルモンと考えられる。腫瘍状石灰沈着症の原因遺伝子の一つとして,0型糖鎖付加に関与するGALNT3遺伝子が同定された。そこで本研究では,FGF23蛋白と0型糖鎖付加の関係を検討した。変異FGF23蛋白の検討などにより,FGF23蛋白には3ケ所のO型糖鎖付加部位が存在することが明らかとなった。またこれら3種類の糖鎖は,まず始めに^<200>Thr,次に^<171>Thr,最後に^<178>Thrへと順次付加されていくこと,^<171>Thrに糖鎖付加を受けたFGF23蛋白は,ほぼすべて速やかに^<178>Thrへも糖鎖付加を受けることが明らかとなった。一方既に一部のFGF23蛋白は,^<179>Argと^<180>Serの間で切断されること,この切断を受ける前の全長FGF23は活性を有するのに対し,切断された後のN端やC端フラグメントには,活性は認められないことが報告されていた。今回の検討により,3種類の糖鎖付加を受けたFGF23蛋白はこの分解を受けないのに対し,より少ない糖鎖を持つFGF23蛋白は切断されることが明らかとなった。従って,切断部位近傍の^<178>Thrへの糖鎖付加は,FGF23蛋白の分解を抑制するように作用すること,従ってFGF23蛋白のO型糖鎖付加による翻訳後修飾は,FGF23活性調節機構の一つであることが明らかとなった。
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