申請者らは、Ink4a-ArfダブルノックアウトマウスとInk4a-Arf-Bmi1トリプルノックアウトマウスの造血幹細胞(Lineage-IL-7R-c-Kit+Sca-1+: IL-7R-KSL)を純化し、DNA microarray解析により、Bmilが特異的に制御する遺伝子群をプロファイリングした。意外にもInk4a-Arf-Bmi1トリプルノックアウトマウスの造血幹細胞においては一連のB細胞関連遺伝子の発現が脱抑制しており、造血幹細胞分化が明らかにB細胞系に偏っており、T細胞分化が抑制されていることが明らかとなった。この過程に重要なBmi1の直接的な標的遺伝子はB細胞分化のマスター制御遺伝子であるEBF2とPax5であることが確認された。したがって、Bmi1はこれらの分化制御遺伝子の発現を抑制することにより、造血幹細胞の未分化性・多能性を維持するとともに、造血幹細胞の分化を適正に制御するものと考えられる。さらに、HoxC遺伝子群が複数脱抑制していることも確認され、造血幹細胞におけるこれらの遺伝子の異所性の活性化がどのような細胞生物学的意義を有するのか、解析を進めている。
|