研究概要 |
【目的】申請者らは関節リウマチ(RA)に特異的な自己抗体を見出し,その対応抗原として,カルシウム依存性システインプロテアーゼ(カルパイン)の特異的内在性阻害因子カルパスタチン,およびホリスタチン関連蛋白(FRP)を報告してきた.カルパインは炎症に関与する様々な因子の活性化を司り,RAの関節破壊に関与する中性プロテアーゼの一種と考えられている.申請者らはこれら自己抗原の炎症・骨破壊抑制効果を追究し,RAの新たな治療戦略の確立を目指している.昨年度までに我々は,カルパスタチンは滑膜細胞でのIL-6産生を抑制すること,カルパイン活性の亢進はCD4+T細胞をTh2からTh1へ分化誘導させることによっても関節炎症を増悪させる可能性があることを示した.本年度は,実際にカルパスタチンまたはFRP遺伝子導入によるコラーゲン誘発関節炎(CIA)の制御を検討した. 【方法】1)カルパインをコードするcDNA,カルパスタチンのドメインIVをコードするcDNA,およびマウスFRPをコードするcDNAをそれぞれmRNAよりRT-PCRで増幅し,レトロウイルスベクターに組み込んだ.2)マウス脾臓細胞よりCD4+陽性T細胞を分離し,遺伝子組み換えレトロウイルスを感染させた後にII型コラーゲン感作マウスに移入し,関節炎発現への影響を検討した. 【結果】カルパインを過剰発現させたCD4+T細胞を移入したマウスではコラーゲン誘発関節炎の発現が有意に増強されたのに対し,カルパスタチン過剰発現T細胞移マウスでは関節炎の発現が有意に抑制された.FRP発現T細胞移入マウスにおいても関節炎の有意な減弱効果が確認された. 【結論】RAにおいてはカルパイン活性の亢進が関節炎を増悪させる可能性が考えられている.カルパスタチンはカルパスタチンのプロテアーゼ活性を抑制することによって関節炎の惹起あるいは進展を抑制する可能性がある.同様にFRPはRAにおける関節炎抑制作用が報告されている.これらの関節炎抑制蛋白の関節局所における過剰産生により関節炎をコントロールできる可能性が示唆された.
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