研究概要 |
NKT細胞は、その多くが可変性の乏しいインバリアントT細胞受容体(TCR)を発現し、多型性のないCD1d分子に提示される糖脂質を認識するユニークな細胞である。また、TCRを介した刺激によりIL-4、IFN-γなど多くのサイトカインを速やかに大量に産生することから、自己免疫、アレルギーなど多くの免疫調節に関与する。我々は、これまでNKT細胞のリガンドを用いて自己免疫疾患を治療しようとする試みを世界に先駆けて行い、OCHなどの新規合成糖脂質を報告してきた。今回、抗体誘導性関節炎を強く抑制する新規合成糖脂質(Suppressing Glycolipids: SGL)をみいだした。SGLは、α-galactosylceramideのスフィンゴシン鎖を5炭素鎖延長したものである。SGLは、誘導前または発症後に投与すると関節炎を抑制した。Jα18ノックアウトマウスではSGLは関節炎を抑制せず、その効果はiVα14T細胞依存性であった。血清移入関節炎におけるSGLの病態抑制効果は、IL-4、IL-10、TGFβに対する中和抗体の投与により減弱しなかったが、IFN-γの中和により、その抑制効果はほぼ消失した。IFN-γを投与すると、血清移入関節炎は抑制された。SGL投与およびIFN-γ投与により血清投与によるヒスタミンの放出が抑制され、組織所見において肥満細胞の脱顆粒が著名に抑制されていた。IFN-γ受容体ノックアウトマウス由来の肥満細胞を肥満細胞を欠損するw/vマウスに移入した群では、SGLによる関節炎抑制効果がほぼ消失したことから、SGLによる血清移入関節炎抑制にはIFN-γを介した肥満細胞活性化抑制が重要であることがわかった。また、OVA感作による気管支喘息モデルでは、SGL投与により気管内の好酸球浸潤および気管支肺胞洗浄液中のIL4,IL-5,IL-13上昇が抑制され、アレルギー性気道炎症病態も抑制した。
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