筋ジストロフィー症に代表される筋変性疾患に対する根本的治療法は存在せず、その転帰は不幸な経過をたどる。新規治療の試みとして遺伝子治療が模索されているが、現在の方法では特異的な遺伝子変異を持つ一部の筋変性疾患のみが対象となり、普遍性を持つ新しい治療展開が期待されている。根本的治療法がなく不幸な転帰をたどる患者さんに明るい未来をもたらす治療法を確立するには、ES細胞より骨格筋幹細胞であるsatellite細胞形成に至る機構を明らかにした上で、大量培養にて作成するシステムの構築を行ない、新しい治療体系の確立が必須である。その達成のためには、上記基盤技術の開発とともに、全身に分布する障害筋組織を修復するために、作成されたsatellite細胞を全身の筋組織に生着させ、成熟させるといった面からの研究も必須である。このような視点より研究を行った。本研究では、ES細胞よりEB形成を経て、SM.C-2.6特異抗体を用いてsatellite細胞を特異的に作成、分離する基盤技術の開発を行った。作成したsatellite細胞をマウスに移植し、骨格筋障害を加えたマウスにおいて、骨格筋再生に寄与することを明らかとした。さらに、これらのsatellite細胞を採取して再移植を行い、骨格筋障害を加えることにより骨格筋再生に寄与することを明らかにした。また、6カ月間という長期の期間にわたって観察を行い、筋ジストロフィー症に対する治療基盤技術の開発の素とした。
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