今回我々は、TRAIL Decoy ReceptorであるDCR2遺伝子(DCR2)プロモーター領域の異常メチル化を定量的に測定する方法を開発し、神経芽腫(NB)患者の腫瘍DNA、血清DNAでのDCR2異常メチル化と、臨床経過との相関、予後因子としての意義について検討した。 bisulfite処理したDNAを用いてreal-time PCR based methylation specific PCR法によるメチル化の定量的な評価を行った。1986年から2006年までに当院で治療を行ったNB患者86例をDCR2異常メチル化の有無で2群に分け、発症年齢、病期との関係を単変量解析で、各々の生存率の差をKaplan-Meier法で解析した。DCR2異常メチル化は全NB 86例中24例に、MYCN非増幅患者68例に限った検討でも15例に認め、いずれも有意に進行例が多かった(p<0.001、p<0.001)。全NB群の無イベント生存率(EFS)はメチル化陽性症例で有意に低く(5年EFS 84%、43%;p=0.001)、MYCN非増幅群でも同様であった(5年EFS96%、12%;p<0.001)。MYCN増幅とDCR2メチル化は有意な相関を認めなかった(p=0.04)。初診時、経過観察中の患者血清中遊離DNAからもDCR2異常メチル化を検出でき、その検出率は治療効果と相関して低下した。DCR2異常メチル化は、NBにおいて強力な予後不良因子である可能性が示唆された。とくに、DCR2異常メチル化の検出は、MYCN非増幅例のなかで予後不良群を抽出するのに有用となる可能性がある。また、血清DNAを用いたDCR2異常メチル化の検出は、微小残存病変の検出と治療効果の判定に有用となる可能が示唆された。
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