研究概要 |
重度知的障害を呈する症例から同定した新規の2遺伝子(PLEKHA5,SLC19A3)に関する研究とX染色体に病因遺伝子が連鎖している未知の重度知的障害の病因遺伝子の解析を行った。 1.PLEKHA5:本遺伝子(タンパク質)の脳発達における機能を明らかにする目的で、本タンパク質に含まれるPH(pleckstrin homology)ドメインに注目し、同ドメインと結合するリン脂質を決定した。PHドメインタンパク質とGSTの融合タンパク質を大腸菌で発現させた後にグルタチオンカラム精請しPI(phosphatidylinositol)ストリップに反応させた。その結果、PIP2(4,5)などのリン脂質と特異的に結合した。 2.SLC19A3:重度知的障害の症例から同定したミスセンス変異を有する遺伝子改変マウスを作製するために、作年度に成功しなかったネガティブセレクションマーカー:DTA(ジフテリア毒素)をTK(チミジンキナーゼ)に変更した。ES細胞に新ターゲットベクターを導入後、PCRとサザン解析にて、遺伝子組替えを確認した2個のES細胞を同定した。 3.X染色体(Xq27-ter)に連鎖が見られる家族性脳発達障害:家系内の4名の症例(男児)すべてに繰り返す呼吸器感染症がみられた。一方、X染色体の長腕末端近傍の重複症例(MECP2を含む)に類似の症状が報告されている。そこで、発端者の祖母とその3名の娘(母親)、そして4名の患者(息子)について、サザン解析を用いてMECP2とその近傍の遺伝子の重複の有無を解析した。その結果、4名の全ての患者にMECP2とその近傍の遺伝子の重複が確認された。祖母と3名の母親にも同様の結果が得られ保因者と考えられた。
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