研究課題
研究代表者らは、進行性の脳萎縮と基底核/視床病変を特徴とする家族性の常染色体劣性疾患の病因遺伝子を同定するために、まず患者4症例を含む家系員の全ゲノム連鎖解析を行い、病因遺伝子座を2q36に決定した。次に、その領域内の16個の候補遺伝子の全エクソン、エクソン/イントロン接合部の塩基配列の決定を行い、SLC19A3からホモ接合体のミスセンス変異(E320Q)を同定した。両親は同変異のヘテロ接合体であった。4例中2例は呼吸不全で死亡し、他の2例は最重度の精神遅滞で寝たきりである。研究を延長した平成21年度は、上記の家族性疾患の臨床所見と遺伝子変異をまとめて海外の学術雑誌に投稿した。さらに、症例に見られる変異を導入したSLC19A3ノックインマウスの作製を継続して行った。既にノックインを行っている3系統のES細胞を各々40個ずつ、C57BL/6J胚盤胞にインジェクションしてキメラマウスを作製した。2系統から各々6匹と1匹のキメラマウスが生まれた。そのうちの4匹を用いてC57BL/6Jと交配した結果、F1の32匹中28匹の毛色が黒であり、生殖系列への伝承(germline transmission)を確認した。次にPCRと塩基配列の決定により、28匹中13匹にノックイン(ミスセンス変異)を確認した。以上より、症例と同じ変異をもつF1(ヘテロマウス)を13匹作製した。
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