研究課題
基盤研究(B)
先天性水頭症の原因遺伝子の一つであるL1cam遺伝子は、脳形成期において神経芽細胞の遊走と分化、神経細胞の軸索伸長とガイダンス、シナプスの可塑性、神経線維束形成などに重要な役割を担っている。我々は、L1cam遺伝子異常による水頭症発症のメカニズムを解明するために、胎生早期のマウス大脳において、L1camタンパクを脳局所的にshRNAによりノックダウンし細胞単位での動態を解析することを企図した。まず、in vitroの系でマウス初代培養大脳皮質神経細胞培養細胞に対し、shRNAによるL1cam遺伝子の制御を試み、L1camが抑制されたときの神経細胞に出現する表現型について解析した。L1camを抑制するshRNA発現プラスミド(L1-shRNA)をマウス神経芽腫細胞株であるNeuro2aに導入すると、48時間後でL1cam mRNAの発現が20-50%に抑制され、96時間後でL1camタンパク発現が抑制されることを確認した。そこで、胎齢13.5日の胎仔から作製した初代培養大脳皮質神経細胞に対し当該L1-shRNAを導入すると、コントロールプラスミド(NC-shRNA)導入細胞に比較して、96時間後の時点で細胞形態に変化が生じた。L1-shRNA導入細胞では、より短い突起を細胞体から派生し、突起の全長が短くかつ末梢側で複雑な分枝を有するという特徴を示した。全長のL1camの抑制によって、L1camの細胞表面での分布や他の細胞内分子との相互作用が干渉されている可能性が示唆された。さらに、L1cam mRNA抑制効果の良好であったL1-shRNAをin utero electroporationにより、胎齢13.5日の胎仔脳側脳室脳室層に導入し、導入細胞の神経細胞分化、放射状移動への影響を解析した。L1-shRNA導入細胞では、コントロールに比して、神経細胞分化、放射状細胞移動に時空間的差異は認められなかった。今後、視床皮質路の形成と水頭症発症との関連に着目した研究の続行を企図している。
すべて 2008
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
Biochem Biophys Res Commun 369(3)
ページ: 953-957