研究代表者らは、乾癬の皮疹形成に表皮角化細胞Stat3の活性化とT細胞とのクロストークが必須であることを、モデルマウス(K5.Stat3Cマウス)を用いて明らかにしてきた。本研究の結果さらに明らかになったことを以下箇条書きにする。 1)K5.Stat3Cマウスにテープストリッピング、あるいはTPA外用により誘導した乾癬様皮疹よりreal-time RT-PCR法を用いてT細胞リンフォカインを検討した。皮疹部位は非皮疹部位に較べ優位にIL-17およびIL-22の遺伝子発現が亢進していた。IL-22はIL-17同様TH17の分泌するリンフォカインであることから、乾癬様の皮疹にはTH17が局所浸潤していることを強く示唆する。 2)表皮Stat3の活性化が乾癬の皮疹形成に必須であることより、これを標的とした乾癬の新たな治療法の可能性を検討した。Streptomycesから分離されたaugucyclinone系の抗生物質であるSTA21はStat3シグナルを特異的に阻害できることが近年発見された。しかも分子量が約300と小さく外用に適している。代表研究者らはSTA21が角化細胞Stat3活性化を阻害しうるか、まず角化細胞transformed cell lineを用いてin vitroで検討した結果、STA21は角化細胞の増殖を著明に抑制することが明らかになった。さらにこの抑制効果はStat3の下流分子であるcyclinD1およびc-mycの遺伝子発現の阻害によることをreal time RT-PCR法で明らかにした。 3)さらに、0.2%STA21を含有する軟膏の外用によりK5.Stat3Cマウスの乾癬形成が抑制できた。以上の結果は、Stat3の活性化が乾癬病変の形成に必須であることを確認することが出来たばかりでなく、その活性を阻害できる外用療法によって新たな乾癬の治療法開発への道筋を示した。
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