研究概要 |
我々は、乾癬のモデルマウスを用いた系を用いてStat3活性化が発症に必要条件であることを明らかにした。また、乾癬発症に表皮角化細胞とT細胞の相互作用が必要であることも示した。本研究において乾癬様皮疹部位をreal-time RT-PCRにて検討したところIL-17,IL-23,IL-22いずれのmRNAも、無疹部に較べ高発現していることが明らかになった。同様の事実はヒト乾癬皮疹部、血清にも認められておりTh17が乾癬の発症に関与していることを示唆している。最近、Th17細胞から分泌されるIL-22が表皮角化細胞のStat3を活性化すると報告された。そこで表皮のStat3の活性化を阻害することが治療法となりうるか検討するため、低分子のStat3阻害薬STA21を用いた。STA21はヒト扁平上皮癌細胞の増殖を阻害でき、Stat3の標的分子c-myc,cyclinD1の転写を抑制していた。さらにSTA21の局所投与によりモデルマウスに発症する乾癬様病変の発症を抑制できたことより、表皮のStat3シグナルを阻害することが新たな乾癬治療法となりうることを強く示唆した。IL-6受容体であるpg130刺激下でStat3が有意に活性化するマウス(pg130F759)は関節炎を自然発症することが知られている。我々はこのマウスを用いて乾癬様皮疹を誘導すると、近接する関節に炎症が発症することを発見した。臨床的に、関節症性乾癬の皮疹と関節症状の関連につきヒントを与えている。我々の研究は、疾患モデルマウスを用いることによって臨床応用へ直結できるトランスレーショナルリサーチとして有用なモデルを提供できたものであれ、将来的には社会へ大いに貢献できるものと考える。
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