研究概要 |
朝型夜型指向性に及ぼす遺伝的要因および環境的要因の関与を検討する目的で,交代勤務者を含む第一次調査対象である健常成人1030人(平均年齢36.0歳,18-77歳)及びその同居家族784名(平均年齢43.4歳,10-97歳),計1814名(平均年齢39.2歳,M/F=732/1082,有効回答回収率:85.7%)を対象として,Horne-Ostobergスコア表,Pittsburg Sleep Quality Index, CES-Dスケール(Center for Epidemiological Studies Depression Scale)を用いて朝型夜型指向性,睡眠状態,気分に関する質問紙調査を行った.その結果,入眠及び覚醒時刻に共通して強い影響を及ぼす要因として本人の日周指向性が抽出された.また,入眠時刻には本人の不眠傾向(強)と配偶者の入眠時刻(弱)が,覚醒時刻には本人の性別(弱)と配偶者の覚醒時刻(弱)が影響していた.年齢,交代勤務の有無,同居年数,寝室の共有,食事共有回数,配偶者の日周指向性は影響因子として抽出されなかった.夜型指向性の強いものは,総睡眠時間が短く,入眠困難があり,高い睡眠障害スコアを示した.同時に日中の眠気が強く,抑うつ傾向を示した. また,第一次調査対象となり解析が進んでいる920名を抽出して,Katzenbergら(1998)により報告された朝型夜型指向性とhClock(Homo sapiens clock homolog)の3'-flanking regionに存在する3111T/C多型との関連について追試検討した.その結果,日本人集団においては3111C homozygotesがその他の遺伝子型保有者に比較してHorne-Ostobergの朝型夜型スコアが有意に低値であり,夜型指向性の感受性を増大させる可能性が示唆された.現在、hPer1,2,3,hBMAL1等の時計遺伝子群の機能的多型のスクリーニングとともに、日周指向性の表現型との機能相関についての検索を進めている。
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