研究課題
基盤研究(B)
統合失調症と気分障害における社会的認知障害の脳基盤を解明することを目的として、人間の社会性の基盤をなす言語に注目しその流暢性を課題に用い、頭部用の多チャンネル近赤外線スペクトロスコピイ(NIRS)装置により前頭葉機能の賦活反応性を統合失調症・大うつ病・双極性障害で検討した。(1)統合失調症について (1)課題区間における前頭葉賦活が小さく、課題終了後の前頭葉賦活が過剰であるという所見を認めた;(2)全体としては前頭葉皮質の活性化が非効率であることを示唆するものと解釈できた;(3)そうした前頭葉賦活は、課題前半の賦活は陽性症状と負の相関を、課題終了語の賦活は陰性症状と正の相関を示すという、時間経過にそった精神症状との関連を示した;(4)このような統合失調症における前頭葉機能の特徴と精神症状との関連は、治療経過にそって反復した検査をおこなった縦断的検討においても認められた。(2)大うつ病にっいて (1)課題区間において初期には前頭葉賦活が認められるものの、その後の賦活が持続せず小さかった;(2)この所見は全体としては前頭葉皮質の活性化が乏しいことを示唆するものと解釈できた;(3)前頭部プローブの所見は検査時点での精神症状と関連しなかったが、右側頭部の脳賦活は抑うつ症状と相関を示した。(3)双極性障害について (1)課題区間において前頭葉賦活が緩徐に生じ、その頂点が後半に位置するという特徴があった;(2)この所見は双極性障害において前頭葉賦活が徐々にであれば十分に生じうることを示すものであった;(3)前頭プローブにおける抑うつ状態でのこうした所見は、軽躁状態では異なる可能性が示唆された。
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