研究概要 |
(1)脳画像研究 (i) PET (Positron Emission Tomography:陽電子放出型断層撮影) 本年度は脳内セロトニン系に焦点をあてたPET研究を行った。自閉症では健常者と比較して,大脳皮質全般,基底核,中脳,小脳に渡る広範囲の部位でセロトニントランスポーターが有意に低下していた。視床のセロトニントランスポーターの低下が強迫症状の強度と有意な相関が認められた。今回の結果によって、自閉症は神経発達の段階、成長過程においてセロトニン系メカニズムの障害が派生していることが推測された (ii) MRI (MRS) プロトンMRS(^1H magnetic resonance spectroscopy)において、海馬、小脳を中心に細胞や膜脂質の性状を探り、脳における代謝異常と臨床症状との関連を明らかにした。 (2)臨床症状と認知機能の解析と脳画像所見との関連性 自閉症に関しては抑うつ,不安、強迫症状、攻撃性などの臨床症状やこころの理論を含む各種の認知障害がある。PET画像との相関関係を明らかにし、強迫症状やこころの理論との関連を明らかにした。 (3)生化学計測,遺伝子解析 血清サンプルを用いて、生物学的診断マーカーをスクリーニングする試みを行なった。自閉症では血清中の血小板内皮細胞接着分子1(sPECAM-1)は有意に低下し、その低下は頭囲と正の相関を示した。血清中の接着分子P-セレクチンは自閉症で有意に低下し、この低下は社会性の障害を示す尺度と相関していたことを見出した。さらにグルタミン酸、Brain-Derived Neurotrophic Factor、Epidermal Growth Factor、Hepatocyte Growth Factor、Transforming Growth Factor β1などで、健常者と自閉症患者の間に血中濃度の有意差を見出した。
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