研究分担者 |
相馬 仁 札幌医科大学, 医学部, 助教授 (70226702)
池田 官司 札幌医科大学, 医学部, 講師 (30232193)
橋本 恵理 札幌医科大学, 医学部, 講師 (30301401)
鵜飼 渉 札幌医科大学, 医学部, 講師 (40381256)
加藤 忠史 理化学研究所, 老化・精神疾患研究グループ, グループディレクター (30214381)
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研究概要 |
胎生期のアルコール暴露によって,新生児の形態・発育・精神発達に異常が生ずることが知られている(FAS : Fetal Alcohol Syndrome)。我々の研究も含めた最近の知見から,胎生期の神経幹細胞の機能が,比較的低い生理的な濃度のアルコールや依存性薬物によっても大きく影響を受けることが分かり,外形的には変化が無い場合であっても脳の神経ネットワークとしてはかなり影響を受けている,いわば"潜在性のFAS患者"の存在が推察されており,その診断・予防・治療法の開発・確立が求められている。 はじめに我々は,(1)神経幹細胞にエタノールを処置することによって,神経細胞への分化を負に制御する転写因子,NRSFの標的配列への結合活性が有意に増強され,同時にその蛋白発現量も増加することを示した。また,アルコールによるNRSF活性変化の機序として,近年,精神疾患の病態との関連が注目されている,小胞体の機能変化に着目した検討を進め,NRSFが小胞体ストレスの負荷によっても発現増加することを見出し,アルコールが小胞体機能の変化を介してNRSFの制御機構に変化を及ぼしている可能性を明らかとした。 次に,(2)アルコールが脳内神経新生に及ぼす影響にっいてin vivoでも検討する目的で,胎生期ラットをアルコールに暴露させ,生後に神経幹細胞の移植を実施した後,行動薬理学的解析を行い,成長後の問題行動の根治的な治療法の可能性を探索した。蛍光色素とRIで標識した神経幹細胞を経静脈的に投与する方法で,FAE群ではより多くの細胞が脳内に移行することを観察した。さらに,高架式十字迷路を用いた行動評価において,FAEモデルラットが,ヒトのFAEで特徴的な症状である,不安の欠如(衝動性)と多動性を示すことを認め,これらの行動異常が,神経幹細胞移植を施行することにより対照群と同等な程度まで改善することを明らかとした。
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