研究概要 |
ASCT1, ASCT2, VGLUT1, VGLUT2について、全翻訳領域のmutation screeningを行った。統合失調症20名の末梢血リンパ球より調整したDNAサンプルを使用してPCR-direct sequence法による変異・多型解析を行なった。患者・対照研究には、統合失調症と診断された202例(平均年齢48.5±11.2歳)、年齢・性別比の一致した健常対照187例(47.1±9.9歳)を対象とした。なお、本研究は、東京都精神医学総合研究所、都立松沢病院の倫理委員会の承認を得て実施され、被験者にはインフォームドコンセントののち書面による同意を得て行われた。LD解析を行ったところ、VGLUT1は一つのLDブロックから構成され,そのハプロタイプ頻度は,健常対照群と統合失調症群で異なる傾向を示した(P=0.06).また,同一LDブロック内のIVS2+87A>Gが妄想型(男性群)とのみ有意な関連を認めた(P=0.01).一方,VGLUT2は,二つのLDブロックから構成され,各々のハプロタイプ頻度は,健常対照群と統合失調症群で有意な違いはなく,遺伝子頻度の低いIVS2-49G>A(minor allelic frequency, control, 0.01; schizophrenia, 0.05)でのみ女性群と有意な関連が認められた(P=0.02).また,VGLUT1/2多型とも多重比較を考慮した補正を行った場合には,統合失調症に関する有意はいずれも消失した.以上の結果から,VGLUT1/2多型が,統合失調症の発症脆弱性に大きく影響する可能性は低いと考えられるが,性差・亜型の違いを考慮する必要性が示唆された.ASCT1の変異・多型解析の結果、新規の多型を4箇所に同定し、既知の多型を5箇所に同定した。また、エクソン8に新規の4bp欠失を同定した。同定した多型について患者・対照研究を実施した結果、5'上流領域の多型が解体型と有意な関連を示し、エクソン6のアミノ酸置換を伴う多型が残遺型と有意に関連した。多重比較を考慮した補正を行った場合には,統合失調症に関する有意はいずれも消失した.
|