研究課題
精神疾患とグリア細胞、特にNG2細胞の関連を研究する目的でスタンレー財団より入手した死後脳をFACSおよびウェスタン解析したところ、前頭前野(BA10)の灰白質において統合失調症(Sch)、双極性障害(BP)、大うつ病(MDD)でolig2陽性細胞数の減少とNG2発現量が低下していることを発見した。これらの結果はオリゴ前駆細胞であるNG2細胞数がSchやBP脳で減少しているか、NG2の発現量自体が減少している可能性を示唆している(Neuroscience Meeting 2007で発表)。昨年度、神経前駆細胞の一種であるNG2細胞の成体脳からの新しい培養法を確立し、in vitroで90%以上の純度でNG2細胞の長期培養が可能なことを報告した。さらにNG2細胞が抑制系神経細胞、オリゴデンドロサイト、アストロサイトへ分化することを明らかにした。しかし、NG2細胞に関して最も重要なことは、この細胞が神経細胞との間にグルタミン酸シナプスを有する特殊なグリア細胞であることである。すなわち、NG2細胞はシナプスを通じて神経細胞から直接、興奮性・抑制性の信号を受けており、AMPA型グルタミン酸受容体を介した神経-グリア間のLTPが出現する。しかし、その意義に関してほとんど何も分かっておらず、現在世界中で研究競争が繰り広げられている。われわれは昨年度、in vitro細胞培養系の利点を生かし、NG2細胞がAMPA刺激によってグリシンを分泌することを発見した。一方、D-セリンは分泌しない。グリシンは抑制性介在神経細胞のアゴニストであると同時にNMDA受容体のコ-アゴニストである。これらの発見は、NG2細胞がグルタミン酸刺激によって、神経細胞のNMDA型受容体をさらに活性化させる機序を持つ可能性を示唆しており、新しいグルタミン酸伝達のシグナル増強機序及び神経-グリア相関機能の発見につながる可能性がある。
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http://www.prit.go.jp/Ja/Archives/arch07.html#Pdepres