研究概要 |
がん温熱治療療法の問題点として温熱耐性が知られている。我々は温熱耐性獲得機構を明らかにすることで、その耐性を抑制し、がん治療効果の増進を目指している。そこで、DNA二本鎖切断の損傷認識にかかわるH2AX-Y,MDC1、NBS1、BRCA1、非相同組換え修復にかかわるKu80.XRCC4、LIG4、REV3L、相同組換え修復にかかわるXRCC2、BLM、WRN、DNA架橋除去にかかわるFANC4、FANCC、FANCD、乗換え修復にかかわるREV1、除去修復にかかわるPOLβ、POLη、POLτ、POLκ、LIG1、PARPについて、それぞれのノックアウトマウスから確立されたMEF細胞を用い、あらかじめ45.5℃、5分間温熱処理し、時間をおいて再度45.5℃温熱処理し、コロニー形成法により、温熱感受性と温熱耐性における各種遺伝子の関与を調べた。 その結果、DSB損傷認識、乗換え修復と非相同組換え修復にかかわる遺伝子欠損細胞は温熱感受性に差は認められなかったが、相同組換え修復にかかわる遺伝子欠損細胞は温熱に感受性であることが認められた。温熱耐性に差が認められる関連遺伝子はPOLβのみであった。POLβ欠損細胞にあらかじめのHSP阻害剤処理によって、潟熱耐性は低下した。温熱耐性を獲得するとヒストンH2AXのリン酸化量は少なくなり、一方、温熱耐性が低下するとヒストンH2AXのリン酸化量は多くなり、生存率の結果と高い相関性を示した。以上のことから、あらかじめの温熱で誘導されたHSPが熱変性したPolβを修復することでDSB生成量が少なくなるため耐性になること、POLβ以外にもHSPがレスキューするタンパク質が温熱耐性に関与していることが示唆された。
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