研究課題
異種臓器および細胞が長期間生着しない理由のひとつに、マクロファージの細胞傷害性が関与することが指摘されているが、詳細な機序は未だ解明されていない。最近我々は、ヒトマクロファージがGalα1,3Gal(Gal)抗原を除去したブタ細胞に対しても、抗体補体非依存性の細胞傷害性を示すことを解明した。この結果は、Galノックアウトブタを使用した異種移植でもマクロファージ性拒絶反応は回避し得ないことを意味する。マクロファージの自己寛容機構として、赤脾髄マクロファージの阻害受容体シグナル制御蛋白α(SIRPα)が赤血球上のCD47(インテグリン関連蛋白質)を認識し非特異的活性化を抑制することが知られている。本研究では、ブタ細胞とヒトマクロファージ間ではCD47-SIRPαによるシグナル伝達が作動せず、マクロファージの非特異的傷害活性が抑制されない可能性について検討した。pKS336 vectorを用いてブタリンパ芽球株にヒトCD47遺伝子を導入し、ヒトマクロファージによる貧食試験を行なった。ヒトマクロファージは抗体補体非依存性にブタリンパ芽球細胞を貧食したが、ヒトCD47遺伝子導入ブタリンパ芽球細胞は、ヒトマクロファージによる貧食に抵抗性を示した。また、可溶性ヒトCD47-Fc融合蛋白の存在下では、ヒトマクロファージのブタリンパ芽球細胞に対する貧食能は抑制されたが、ヒトCD47遺伝子導入による貧食抑制効果の方が顕著であった。また、ヒトCD47分子を豊富に発現したヒト赤血球と接触した培養条件下でも、ヒトマクロファージのブタリンパ芽球細胞に対する貧食応答は影響されなかった。以上より、ブタ細胞に対するマクロファージ性拒絶機構を回避するには、当該ブタ細胞上へのヒトCD47分子の発現が必要であることが解明された。
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PNAS(On-line Early Edition,published March 12,2007) (In press)
Transplantation 81・6
ページ: 940-948
The Journal of Immunology 177・6
ページ: 3615-3624