異種間でのCD47-SIRPαシグナルの不応答が、マクロファージによる自然免疫応答を引き起こし異種移植臓器の拒絶反応を誘発すること、またブタ細胞へのヒトCD47遺伝子の導入によりマクロファージ性拒絶機構が回避し得ることを昨年までの研究で解明した。CD47-SIRPαシグナルは獲得免疫応答にも重要な影響を来たす可能性が考えられる。すなわち、同種異系移植に比べ異種移植でT細胞性免疫応答が強力である理由の一つとして、樹状細胞に代表される抗原提示細胞が異種間CD47-SIRPαシグナル不応答により異種細胞を貧食し、異種由来ペプチドを効率よくT細胞に抗原提示している可能性がある。異種移植でのT細胞性抗原認識におけるCD47-SIRPαシグナル不応答の関わりを解明する上で、異種移植における強力なT細胞応答において、反応するT細胞クローン数が多いのか、あるいはT細胞1個あたりの反応性が強いのかは明確ではなかった。我々はCFSE細胞質染色による細胞分裂の視覚化を応用した同種(allo)/異種(xeno:ブタ)リンパ球混合試験(CFSE-MLR)を用いてヒトCD4^+およびCD8^+T細胞の応答を解析した。Anti-alloと-xeno CD4^+T細胞クローンの存在比率に差を認めなかったが分裂指数はxenoにおいて有意に強く、反応系からCD4^+T細胞を除去するとanti-xeno CD8^+T細胞の分裂は有意に抑制された。また、反応系にヒトCD47-Fc融合蛋白を添加するとanti-xeno CD4^+T細胞の分裂は抑制されたことから、ブタ抗原提示細胞上のCD47とヒトT細胞上のSIRPの不応性ゆえT細胞への抑制シグナルが伝達されず、異種移植後には過剰なT細胞増殖がおこり激しい拒絶応答が起こることが解明された。
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