ABO血液型不適合移植では臓器血管内皮に存在する、A/B血液型糖鎖抗原が、またブタ-ヒト間の異種移植ではGalα1-3Galb1-4GlcNAc(Gal)糖鎖抗原やN-glycolylneuraminic acid(NeuGc)糖鎖抗原が標的となり抗原抗体反応により移植臓器が廃絶される。我々は、A/B血液型抗原、Gal抗原あるいはNeuGc抗原に反応性を示すB細胞を特異的に制御しうるプロトコールの確立を目指し研究を推進してきた。 本年度の研究では、これらの移植関連糖鎖抗原反応性B細胞の分化増殖に関わるnatural killer T(NKT)細胞の役割を解析した。CD1d-ノックアウト(KO)マウスとVα14-KOマウス(NKT-deficient)あるいは野生コントロールマウスをヒトA型赤血球で免疫した後に、血清中抗A型糖鎖抗体を測定した。野生コントロールマウスでは、α-galactosylceramide(α-GalCer)(CD1d上に提示されNKT細胞上のinvariant TCRによって認識される)の併用投与により、抗A型赤血球抗体産生の著明な促進が認められた。しかし、CD1d-KOマウスとVα14-KOマウスでは、抗A型赤血球抗体産生は有意に抑制され、α-GalCerの投与効果も認められなかった。また、CD1d-KOマウスに野生マウス由来のNKT細胞を移入したところ、抗A型赤血球抗体の産生が促進した。この結果より、NKT細胞と血液型A抗原反応性B細胞の間には細胞間相互作用が存在し、これを制御することで血液型不適合移植における抗体性拒絶反応を回避し得る可能性が示された。さらに異種抗原反応性B細胞の分化増殖に関わるNKT細胞の役割を解析する目的で、Gal糖鎖-KOマウスやNeuGc糖鎖-KOマウスとCD1d-KOマウスを交配し、ダブル-KOマウスを作出した
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