研究概要 |
本研究の目的は臨床膵島移植で現在最も問題となっている移植膵島障害について,その機序を解明し新規治療法を開発することにある。先の我々の研究でNKT細胞が移植膵島障害に必須の役割を担っていることが判明しており,本研究ではNKT細胞を標的にした治療法開発を試みた。平成18年度の研究では血液凝固関連物質がNKT細胞に対し抑制作用を有することが判明し,平成19年度の研究ではその機序,ならびに臨床応用可能な物質を探索した。その結果,移植膵島障害を惹起する新規責任物質の同定に成功した。本物質は膵島移植に伴い,レシピエント血中に増加し,肝臓内に単核球を集積させ,好中球,NKT細胞に直接的に作用し,炎症性サイトカイン産生を増強し,移植膵島を破壊することが判明した。現在,新たに見出され移植膵島障害の機序を標的にした治療法を評価している。 サルの実験では予備実験としてサル肝臓よりリンパ球の単離が可能かどうか,その場合はフローサイトメトリーで解析できるかどうかを検討した。その結果,十分に実験ができることが判明し,その方法論をヒトの外科的切除肝臓に応用し,ヒト肝臓リンパ球の解析を行った。その結果,ヒト肝臓内はCD4T細胞が少なく,CD8T細胞が優位であることが判明した。現在,NKT細胞につき解析するとともに,膵島障害を明らかにするin vitroの実験系を構築している。
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