研究概要 |
癌抗原を標的とする癌ワクチン療法は,抗原特異的CD4陽性リンパ球およびCD8陽性リンパ球を誘導する材料を用いて臨床試験を開始した。北海道大学大学院医学研究科医の倫理委員会に基づいてプロトコールを構築した。標的は,NY-ESO-1(GMP基準を満たす),免疫活性化アジュバントはCpG(GMP基準を満たす)としたワクチンを構築した。NY-ESO-1蛋白を合衆国のLudwig研究所より,CpGをファイザー製薬より入手した。対象症例は全ての進行・再発癌症例で他の治療法が無効であるかそれを拒否した者とし,十分なインフォームドコンセントに基づいてエントリーを開始した。遺伝子発現の有無を,Ludwig研究所より入手した抗体E978を用いた免疫染色法を施行し判定した。判定法を標準化するために,RT-PCRによってNY-ESO-1抗原の発現が確認されている細胞株であるHEC46と,発現しないことが確認されているTE8を,それぞれSCIDマウスに移植して得られた腫瘍を,免疫染色の陽性対照および陰性対照として用いることが可能であることを確認した。北海道大学腫瘍外科の関連教育病院で再発症例が標準治療を離脱した場合,遺伝子発現解析によってNY-ESO-1陽性と診断された症例のみを対象としている。現在,4例の同意取得がなされたが,うち3例はパフォーマンスステータスが増悪し(1例は肺転の移による呼吸苦増悪,2例は脊椎転移による歩行障害)治療不能となった。現在再発乳癌症例1例をエントリーしており,最終的に9症例を目標として試験を継続する。判定項目として,腫瘍縮小効果をRECISTに基づいて判定しているほか,特異的免疫反応の有無をELISAおよびELISPOT法で検討している。また,本試験をUMINに登録した。
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