研究概要 |
1.遺伝子改変ヒトES細胞株の作製 ヒトES細胞のgenomic DNAからalpha-fetoprotein(AFP)のenhancer及びpromoter領域をクローニングし、hybrid romoterを作製した。この下流にenhanced green fluorescent protein(EGFP)遺伝子を組み込み、AFP転写調節下にEGFP遺伝子を発現するプラスミドを作製した。本プラスミドをヒトES細胞株(KhES1,KhES2,KhES3)に遺伝子導入し、AFPとEGFPとが同一の細胞で発現する遺伝子改変ヒトES細胞株を得た。 2.ヒトES細胞由来内胚葉系細胞の単離および分化誘導法の検証 上記細胞株を細胞外基質および増殖因子の組み合わせによる種々の条件下に分化誘導しEGFP蛍光測定により至適条件を決定した。その結果、マトリゲル上でアクチビンAおよびHGFを加える条件でAFP産生細胞の誘導効率(21%)および収量の改善を認めた。上記のAFP-EGFP陽性細胞をフローサイトメトリーで単離し、RT-PCRで解析した。細胞は内胚葉マーカーを発現していると同時に、中内胚葉マーカーをも微弱に発現していたことから、得られたAFP産生細胞は原始内胚葉だけではなく、definitive endodermをも含むものと考えられた。さらに、ヒトES細胞由来内胚葉細胞を成熟化させるために共培養法を試みた。フローサイトメトリーによる単離細胞は脆弱であり、単独培養が困難であったため、単離細胞とマウス胎仔間葉系細胞とをスフェロイド培養し3次元構造を伴う共培養を行った。マウス胎仔間葉系細胞単独のスフェロイドでは成熟肝細胞マーカーを発現しないが、共培養したスフェロイドに限って成熟肝細胞マーカーの発現を認めた。この結果は,細胞移植に必要な段階にまで分化成熟した肝細胞をヒトES細胞から提供できる可能性を示唆すると考えられる。
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