研究概要 |
癌の多様性をもたらす因子を明らかにすることを目的として各種癌切除標本についてLMD-RNA採取を行い、DNAマイクロアレイ法により遺伝子発現解析と変異解析を行った。さらに各種癌について癌幹細胞検索を進めた。 18年度 LMD-アレイ発現解析:(1)大腸癌切除標本80例、食道癌30例凍結標本についてLMD-RNA採取を行いアジレント社製マイクロアレイ(44K)を用いて発現解析を行い、癌において有意に上昇を認める遺伝子を70個抽出できた。それらの遺伝子についてさらに別の大腸癌標本75例を用いてTaqMan PCR法で解析validationを行ったところ85%の症例でマイクロアレイ解析が確認できた。(2)遺伝子発現解析では癌進展に強く関連する遺伝子としMYC,CLDN1,FABP6,TROP2,BMP7,MMP11,MMP7,DCC1,COL12A1が抽出され中でもTROP2,FABP6は腫瘍での発現が顕著で転移に関連し、独立した予後規定因子となった。 癌幹細胞解析:(1)大腸癌、肝臓癌、胃癌、肺癌細胞株においてVerapamil感受性を指標にSP(side population分画)細胞をセル・ソートしたところ、それぞれ1〜2%に幹細胞分画を認め、未分化表面抗原系(CD133,CD49等)を発現することを認めた。(2)未分化表面抗原系(CD133,CD49等)をマーカーに手術切除癌組織由来の癌細胞をソートした分画は5FU、Gemcitabin等々の抗癌剤に対する抵抗性が強く、治療を指標とした癌組織の多様性が生ずる原因のひとつであると考えられた。19年度は癌幹細胞に対する遺伝子解析をより包括的に行っていく予定である。
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