研究概要 |
【目的】同一患者において(1)宿主側因子として遺伝子多型、(2)腫瘍側因子として遺伝子発現と変異、(3)環境側因子として疫学情報の各解析結果を得て、これらを統合的に利用することで消化器癌の発生・進展・治療感受性に関わる因子を明らかにする。【対象・方法】対象:大腸癌患者2000例、対照群3000例(全例CFを施行)。方法:(1)遺伝子多型:患者と対照の末梢血DNAを用いて50万SNPs遺伝子多型(Affmetrix社)を解析。患者群には抗癌剤治療例を含む。(2)腫瘍側因子:手術標本の利用が可能であった例からmicrodissectionサンプルを収集し、cDNA・ゲノムmicroarray(Agilent社)解析。【結果】(1)対照と癌患者でアリル頻度が10%以上の差を認める多型(trendp<0.0001)を32個認めた。(2)機能的多型としてSMYD3遺伝子で有意な差を認めた(p=0.05)。(3)遺伝子発現解析では癌進展に強く関連する遺伝子としてMYC,CLDN1,FABP6,TROP2,BMP7,MMP11,MMP7,COL12A1が抽出され、中でもTROP2、FABP6は転移に関連し、独立した予後規定因子となった。(4)喫煙と20歳時の体重などが大腸癌発生のリスクファクターになった。(5)抗癌剤感受性と各因子との関連は検索中である。【考察】大腸癌の発生・進展に関与する遺伝子多型・生活習慣や新たな大腸癌関連遺伝子を同定できた。現在解析中の抗癌剤感受性関与因子の結果を含めて、これらを多元的に観ることで日本人大腸癌の個別化医療の推進のみではなく、発癌予防にも寄与できると考えている。
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