COX-2阻害剤(JTE-522)を用いたスキルス胃癌の新しい治療 腫瘍組織においてCOX-2は主に間質系細胞に認められ、線維芽細胞におけるCOX-2の発現が腫瘍細胞の増殖進展に関与することが報告されている。スキルス胃癌細胞と胃の線維芽細胞との相互作用の機序に基づいて、COX-2阻害剤によるスキルス胃癌の増殖進展抑制効果についてin vivo、in vitroにて検討を行った。 材料にはスキルス胃癌細胞株、胃線維芽細胞株を用い、COX-2inhibitorとしてJTE522を用いた。方法は、in vitroではJTE522の処理を行った線維芽細胞および非処理の線維芽細胞の培養上清をそれぞれ添加し、スキルス胃癌細胞の増殖浸潤に及ぼす影響を検討した。また、in vivoの検討では、ヌードマウスの皮下にスキルス胃癌細胞を単独に接種した群とスキルス胃癌細胞と胃線維芽細胞を混合接種した群を作成し、JTE522の経口投与が各群の増殖に及ぼす影響を検討した。 その結果、胃線維芽細胞は、スキルス胃癌細胞の増殖や浸潤を有意に促進させた。COX-2inhibitorは胃線維芽細胞が有するスキルス胃癌細胞の増殖浸潤促進作用を抑制した。COX-2inhibitorの浸潤抑制機序として、胃線維芽細胞からのPGE2の産生を抑制することでHGFの産生抑制が考えられた。以上のことから、胃線維芽細胞のCOX-2はスキルス胃癌の増殖進展に関与しており、COX-2阻害剤はスキルス胃癌の治療に有用であることが示唆された。
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