研究課題
本研究の目的は、慢性肝不全治療のための埋め込み型人工肝臓の開発および腎臓の肝臓化である。その中軸は、われわれの施設で開発したラジアルフロー型バイオリアクター(RFB)システムである。1.RFBを用い、アパタイトファイバースキャホールド(AFS)を利用。マウス不死化肝細胞(IMH4)、不死化内皮細胞(M1)および不死化伊東細胞(A7/E28)をRFBにて混合培養した組織片は類洞様構造を呈し、connexin26&28の発現も良好で肝オルガノイドの形態を呈した。これをヌードマウスの大網および左腎皮膜下に移植すると、いずれのグラフトも生着・増殖し、AFSの可溶性とcapillarizationをともなった。機能的にも肝機能を有していた。現在、胎児肝を含めた正常マウス肝細胞および非実質細胞による同様な実験を進めている。2.ヒト正常肝細胞(胎児肝)を細胞の緩速凍結が可能なBICELLを用い、SEIRENという蚕の繭にふくまれる天然タンパクを加えた凍結保存法にて、1%のSEIRENで良好なviabilityと肝機能に関連する代謝酵素遺伝子の発現を認めた。今後、この結果をRFBシステムに応用する。3.RFBシステムを用いた正常ブタ胎児肝による肝オルガノイド構築したが、それに対しアンモニア負荷実験を行い、その有用性を確認した。4.RFBシステムを体外循環システムによる急性肝不全モデルで追加検討し、特に急性の脳浮腫をともなう肝性脳症に有用であった。以上から、RFB体外循環システムは、急性肝不全に対し完全肝代替には至らないものの、脳症改善に有効であった。また、慢性肝不全に対しては、胎児肝細胞を含めた正常ヒト肝細胞機能を発現する細胞を用いた埋め込み型人工肝臓の開発の糸口をつかんだ。
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