研究概要 |
我々は、一定の温度(キュリー点:Tc)に達すると磁性が失われて発熱が停止する感温性磁性体を開発し、磁場による誘導加熱温熱療法を考案し、本年度の研究で以下の研究実績を得た. 1)寒天ファントム実験 1% agar 50ml tubeの中心部に150μm磁性体(Tc:43)を500mg注入、臨床応用を想定した直径10cmプロトタイプループ状コイルと誘導加熱電源(Hot Shot 5【◯!R】,Ameritherm Inc)600Aの条件で誘導加熱を行い、セラミック温度センサーで中心および周辺部の加温分布を計測した.その結果、誘導加熱後約5分でTc 43℃に達し、以後昇温はプラトーとなりTcを保った.また昇温効果は磁性体半径1cmまでの範囲であった. 2)マウス腫瘍モデル実験 C57Bl/6Jマウスの背部皮下にB16-CG melanoma細胞を10^5 cells/0.2mlHBSS接種し、腫瘍が約5mm大に成長した時点(10日)で腫瘍中心部に磁性体を注入、誘導加温を行った.そして非加温群、単回加温群(day 0,1回)、多数回加温群(every 4 day;計8回)において腫瘍径を経時的に測定し検討した.腫瘍径に関し単回加温群では非加温群に比較して有意差は認めなかったものの、多数回加温群では生存率も含め有意な抗腫瘍効果を認めた.また加温群では有意なアポトーシスの増加が観察された. マウス腫瘍モデルにおいて、本法の有効性が確認された.本結果から、次年度は大型動物による正常組織熱障害も検討、さらなる安全性と抗腫瘍効果を評価し将来的には臨床応用を目指す.
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