研究概要 |
我々は、一定の温度(キュリー点:Tc)に達すると磁性が失われて発熱が停止する感温性磁性体を開発し、磁場による誘導加熱温熱療法を考案し,昨年度の研究でマウス腫瘍モデルを用い多数回加温群(every 4day,計8回)において生存率も含め有意な抗腫瘍効果を認め,アポトーシスの増加も観察された.本年度はその臨床応用を踏まえ,本法の適応を治療開始腫瘍サイズの面から検討を行った.また省電力化を目的として,ロッド(直径2mm,長さ5mm,重さ76mg)磁性体を用いその発熱効率についても検証した. 1)マウス腫瘍モデルを用い、背部皮下に接種した腫瘍が5mmおよび15mmに増殖した時点で、磁性体を注入、ループ型コイルを用いて30分間の誘導加温を行った.そして非加温群、加温群において腫瘍径を経時的に測定し検討した.その結果,治療開始腫瘍径5mm群では有意な抗腫瘍効果を得ることが出来たが、腫瘍径15mm群では腫瘍は徐々に増大し有意な効果を得ることはではなかった.また生存率でも、治療開始腫瘍径15mm群に比べ5mm群の方が良好であった.今回の検討で本法の治療効果範囲が確認された.現行の注入量では磁性体中心より半径10mmの範囲で有意な昇温を得ることが出来、無治療範囲を無くすには直径10mm以下の腫瘤を適応とするか,磁性体注入点を増やすなどの工夫が必要と思われた. 2)ロッド磁性体発熱効率の実験では,ロッド3本で500mg磁性体と同等の発熱が確認され,2.4倍の発熱効率を有することが判明した. 本結果から、今後は省電力化,大型動物による正常組織熱障害も検討、さらなる安全性と抗腫瘍効果を評価し将来的には臨床応用を目指す.
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