研究概要 |
自己骨髄細胞移植による血管新生治療法は虚血性疾患に対する有用な治療法である。しかしながら、患者ごとの本治療に対する反応性(治療効果)に違いが認められる。その原因としては患者の年齢、糖尿病や高脂血症の有無、虚血の程度とその期間などの因子が挙げられるが、どの因子が、どの程度本治療の効果に影響を及ぼすかは不明である。そこで、本研究では自己骨髄細胞移植による血管再生治療の治療効果に影響を及ぼす因子を同定することを目的とした。 胸骨正中切開による手術を受けた成人患者(25例)を対象とした。本研究の同意を得て、手術前に病歴聴取、臨床検査、血管内皮機能の評価を行った。また、手術の際に胸骨から採取した約10mlの骨髄液から単核球細胞を単離し、in vitro(細胞培養)およびin vivo(SCIDマウス虚血下肢への細胞移植)による解析にて各患者の骨髄細胞の血管再生機能を評価した。患者の加齢、腎不全、貧血、血中トリグリセリド・CRP・IL-6・NTX(骨代謝マーカー)といった因子が、骨髄細胞の血管再生機能の低下と有意な相関が認められた。さらに、そうした因子を数値化すると、患者のスコアと骨髄細胞における血管再生能との間に強い相関が認められた(r=0.778,P<0.001)。 以上の結果から、骨髄細胞の血管再生機能に影響を及ぼす因子が同定された。今後、多くの因子を組み合わせることによって、骨髄細胞移植による血管再生療法の治療効果を総合的に予測するシステムの構築が可能となり、本治療の適応患者の選択基準になり得ると考えられる。
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